このコーナーでは、医療を少し離れて、自分自身のことや身の周りの出来事についてお話ししようと思っております。回を重ね、今回で11回目になりました。毎回、お付き合いいただき、ありがとうございます。さて、

今回は「わが子たちの不幸」について・・・です。essay11-1

「おかあさんが小児科医だと、子供さんたちは心配なくていいですね」とよく言われます。確かに、熱が出てあわてるとか、痙攣を見て救急車を呼ぶとかいうことはありません。また咳や鼻水で、長い待ち時間を経て診察・・・といったこともありません。

しかしわが子達は不幸だーと叫んでいることがあります。それは、いつ何時、予防接種を されるかわからないという恐怖です。普通は日にちを決め、予約をし、覚悟をして予防接種を打ちにいきますね。うちの子供たちは違うのです。例えばインフル エンザのワクチン。予約はしたけれども熱が出たとか調子が悪くてキャンセルになったということが多々あります。キャンセルをしなくてはいけない状況はわか るので、仕方ありません。が、用意されたワクチンは、残ってしまい破棄しなくてはいけなくなります。ワクチンも高くてもったいないので、そこで登場するの がわが子達です。

essay11-2ある日突然、母さんが帰宅すると「熱を測りなさい」といいます。まず、誰?と大騒ぎ。 だいたい小さい子からです。当然、残り物なので、一人のみの接種です。じゃあ残りの子はいつやるんだろうと、どきどき・・・熱が測れたら、ちゃちゃっと診 察。「よし手を出して」これが夕食前の出来事です。心構えも何もあったものではありません。「いつもいきなりなんだから!」と憤慨していますが、仕方あり ません。「残り物には福があるんだよ」と言い訳にならない言い訳をしてわたしはすま した顔です。いままで、ずっとそうでした。息子はちいさいとき、麻疹のワクチンを打とうとしたとき暴れて針がとれてしまいました。病院でやると看護婦さん が押さえてくれますが、自宅ではそうはいきません。わたしが自分で押さえて打って・・なのです。針が取れると打てませんのでもう一度刺しなおしになりまし た。息子は暴れると2回打たれると学習し、それ以後、暴れることはなくなりました。次女は、突然「予防接種打つよ」といわれ、家中にげまわったこともあり ます。最終的にはコタツに頭からもぐりこんだところを引きずり出され、バッチリ打たれました。

ある日息子は言いました。「よその家では病院に行ってやってもらうんだよ。そうすればどきどきするけど、びっくりはしない」それをきいて、「じゃあこれからは、ワクチンがのこったら診療所に来てって呼ぼうか?」と提案。「そんなの、意味ないよ」ということでいままでどおりとなりました。このごろは、友達がワクチンを打ちに行ったときくと、そろそろだな・・・と思うそうです。essay11-3

「僕たちはね、ふつうに注射をうけてみたいよ」とよくいわれますが、普通に受ける苦労も知らず、よく言うよ!と一笑に付す母なのです。さて、どちらが幸せでしょうか?

(2006.3.6)